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数字でビジネスを話す人の思考法 – 確率思考 –

Point – 数字に強くなる –

この「ビジネススキル」シリーズでは多くの人にとって役にたつ基本のビジネススキルについて解説をしていきたいと思います。#3は「数字で話す(確率思考を使う)」です。

Point
ビジネスコミュニケーションでは確率思考をベースにした考え方と話し方が重要である。

Reason – 数字で語れるメリット –

現在、テクノロジーの加速度的な進化によって、ビジネスの世界はVUCA時代と呼ばれています。ビジネスの現場では意思決定の際に、確実に成功するとわかることはほぼなく、どこかで(うまくいくかどうかわからない)論理のギャップを飛び越える必要があります。だからこそ、不確実性をなるべく減らす【確率思考】のスキルが重要となります。

MEMO : 確率思考とは

確率思考とは「市場(ビジネス)において、①市場構造を決める要因を洗い出し(市場構造の把握)、②伸び代の大きい要因を特定し(戦略の決定)、③要因を決定する要素の中でコントロール可能なものに対して資本を集中することで市場での勝率を高める(戦術の決定&実行)」と言えます。

より詳しい解説は森岡毅さん・今西聖貴さんの「確率思考の戦略論」などをご参照ください。

確率思考のスキルがあると、不確実性の高いビジネスの中でも、勝率の高い意思決定ができるようになります。また自分の主張に確率のロジックと数字を持ち入れるようになると、「なんとなくそう感じるだけの間違った主張」に対しての強力なカウンターを持つことができるようになります。(意見は無視できても、確率と数字からなるファクトベースのロジックは崩せないため)

Point
数字で話せる(確率思考で考えられる)ようになると、意思決定の精度を高めたり、自分の主張を強力にサポートすることができる。
MEMO : VUCAとは?

Volatility : 変動性
Uncertainty : 不確実性
Complexity : 複雑性
Ambiguity : 曖昧性
の略。VUCA時代とは、テクノロジーによる変化によって業界内だけでなく、業界を跨いだビジネスの変化が頻繁に起こる時代。

Example – 数字を使いこなす思考法 –

確率思考を使う簡単な具体例を試してみます。

場面の設定
今、我々はオリジナルのぬいぐるみをオンライン上で販売しているECショップの担当者だとしましょう。
現状
ここ数年売上・利益ともに横ばいで、上司から「今年は売上を130%成長しろ」と言われている。また上司から「今Instagramで配信している広告がイマイチだから画像を変えろ」とも言われている。

上司

今年は売上を130%成長しろ

上司

Instagramの広告が悪いから変えろ
問題
上司からのオーダーに対してどう対応すればいいでしょうか?

この状況において、もし「わかりました。広告の画像を変えてみます。」と言って広告の画像を変える・・・というアクションをとる人は確率思考ができておらず、「言われた作業をするだけの人」になってしまっています。もしも、「たまたま」Instagram広告のよしあしが原因で売上が伸び悩んでいたのであればラッキーですが、おそらく多くの場合、売上の改善は見られず、売上の達成は難しいだろうと思います。

言われた通り、Instagram広告の改善のため、入稿内容の変更や運用代理店の変更などを行いましたが、売上としての成果はあまり出ませんでした。

上司

私は売上を上げろといったのに、言い訳ばかりじゃないか!(使えないやつだな)

この例の場合、まずはECサイトの売上を作っている要因は何かを考えていく必要があります。ECサイトの場合、売上については以下のような因数分解をすることが可能です。

①市場構造の把握
売上を規定する要素を書き出し、式の形で書いてみます。

ECの売上の因数分解

ECの売上 = PV × CVR × LTV

MEMO : 用語解説
PV : ページビュー。ECサイトがユーザーに何回見られているかの閲覧回数に当たる数字。
CVR:購入率。ユーザーが閲覧した際に商品・サービスを購入する確率。
LTV:顧客生涯価値。一人の顧客が将来にわたって企業にもたらすと予想される価値。
②戦略の決定
売上をあげるにはこの3つの要因のいずれかをあげればいいので、3つの中から「伸び代」が大きいところを探すのがまず最初にすべきことになります。

MEMO : 要素の書き方は一通りじゃない

今回の例ではできるだけにシンプルに議論を進めるためECサイトの売上を規定する要素をPV, CVR, LTVとし、その掛け算で表しましたが、この式以外にも切り口によって、様々な分解が可能です。分解の仕方自体はいろいろなフレームワークがあるので、自社の商材やサービスに適したものを採用するのがいいと思います。(PDCAを回すためには一度決めた分解方法はコロコロ変えずに利用した方が良い)

③-1 戦術の決定
伸び代を探す方法としては、競合となるブランドの指標を調べたり、自社の中で売り上げの良い月と悪い月、良い商品と悪い商品の比較など様々です。調査方法を調査したり、自分なりのロジックで数字を出すなどして、伸び代を探します。
③-2 戦術の実行
調査の結果、自社ではPVは競合などと比べても十分に多いし、年々増えているが、逆にCVRは徐々に下がっていることが判明しました。さらにCVRの中を深堀していくと、カゴ落ち率(商品をカートページに入れてからのユーザーの離脱率)が異常に高いことが判明しました。また、カゴ落ち率は50%ほど平均より高いので、ここに50%の売り上げ改善伸び代があることがわかりました。ここまで来れば、次の施策は広告よりもカートページの改善による「かご落ち率の減少」の方が優先度が高いことがわかります。
④ 数字で話す
後日、上司にプレゼンの時間をもらい、自社のEC売上を構成する要素はPV×CVR×LTVであり、この掛け算の結果を30%以上高めればいいこと、その上で、CVRに50%程度の改善幅があることをプレゼンし、戦略の軌道修正を行いました。
売上=PV×CVR×LTVと考えたとき、弊社では「かご落ち率が高い」ことによって、他社に比べCVRが50%も低いことがわかっています。ここに売上改善の伸び代が大きくあると思います。

「かご落ち」の原因としては「他社に比べて送料が高い」、「配送日の設定ができない」、「ユーザーがよく利用する電子決済方法に対応していない」などがわかりました。これらの機能を改善することで、30%程度のCVRの改善が見込めるシミュレーションができております。

上司

なるほど、 やってみよう!(Instagram広告も気になるけど、確かに言っている事も事実だし、うまくいきそうだ)
Example
構造を明らかにした上で、伸び代の大きい(勝率の高い)領域で勝負する。また、それを数字で人に話せるようにする。

Re-Point – 確率思考を使って数字で話す –

最後に結論の確認です。ビジネスにおいて精度の高い意思決定や、説得力のある主張を行うには物事や市場の構造を理解して、伸び代のある領域で戦略を考えることが重要です。またそれを他人に数字を使って話せるようになると主張を強力にサポートすることができ、最終的には自分の仕事のクオリティが高くなります。

Re-Point
ビジネスコミュニケーションでは確率思考をベースにした考え方と話し方が重要である。

参考文献

例で出てきたECの売上の規定要素や運用について知りたい方は以下の本が参考になります。式(1)はこの本を参考にしました。

この記事に執筆には以下の2冊の本を参考にしました。

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